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失敗や事故のない電気工事の為に必要な設計図

現代の私たちは、ほぼ毎日のように電気設備を利用して生活しています。しかし「その仕組みは?」となると、聞いたこともない難しい専門用語が飛び出してくることもあり、知らない事も多いもの。電気設備に突然の不具合が起きた時の対処、また業者に依頼する時の適切な状況説明のために、電気工事に関わる用語や電気設備図面の見方について、ある程度知識を深めておくことも大切です。

配電計画と設計図

毎日使う電気。それはコンセントに挿したり、或いはスイッチを押すだけで簡単に利用できますが、それにはそこまで電気を運んでこなくてはなりません。実際はどのように計画をしているのでしょうか。

電気の配線方法は現場で決めているの?

設計図を描いて計画しています

設計図を描いて計画していますここに、あそこに、電気があると便利という理由だけで次々と配電していては、家中がコンセントやスイッチ、照明器具だらけになってしまいます。それは見栄えが悪いだけでなく、メンテナンス面、安全面で問題を起こす要因にも・・・。
現在の使い勝手はもちろん大切ですが、将来的に部屋のレイアウト変更などを行っても困らないよう、冷静に先を見越した計画が必要です。そのため、電気工事を行う際は、現場で決めるのではなく、配電理論を順守し先ず設計図を描いて配線設計をしています。

設計図
【設計図の種類】
  • 単線図
  • 複線図
  • 配線図 など
【作図方法】
  • 製図、CADなどの図面ソフト
【参考にするもの】
  • 標準仕様書、内線規程、図形・図記号一覧表 など

配電記号とよくある用語

どこにどう配線したらよいかを示す設計図。電線の種類一つとっても沢山ありますので、図面の内容全てを理解するのは私たち素人には大変なことですが、多少の知識があれば、業者から説明を受ける際に質問もしやすくなります。使われることの多い図面記号とよく聞かれる用語について、以下簡単にご紹介します。

よくある用語(電線・ケーブル編)

■主な表記と意味
図記号 名称 意味
IV 600Vビニル絶縁電線 屋内電気配線用の電線。一般家屋・ビル等で使用されることが多い。
EM-IE 600V耐熱性ポリエチレン絶縁電線 IV電線の環境配慮型でエコ絶縁電線とも呼ばれる。公共施設で使われることが多い。
VVF 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形 VA線とも呼ばれる。一般家屋の天井裏や壁裏の配線に多く使われる。
VCT 600Vビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル 制御回路や交流600V以下の移動用電気機器の電源回路の配線などに多い。
【より線】

複数の導体をより合わせて構成された電線やケーブルの構造のこと。主にLANケーブル、電源コード、USBケーブル等に使用される。太さは断面積で表され、例えば8mm2の配線は、8スクエア(square)略して8スケと呼ばれる。

【呼び線】

埋め込み配管などに本線の電線やケーブルを通線しやすいように、予め入れておく予備の線。

【渡り線】

分岐接続用の配線の事で、同経路または異経路への分岐配線のことをこう呼ぶ。

よくある用語(電線管編)

■主な表記と意味
図記号 名称 意味
PE管 ポリエチライニング電線管 ライニング鋼管とも言われる。耐食性に優れ、露出配管や地中配管に適している。
PF管 合成樹脂可とう電線管 自由に曲げられ施工性が良い。天井裏や見えない場所での敷設が多い。ボンディングが不要。
VE管 硬質ビニル電線管 塩化ビニル製の電線管。直射日光や熱に弱く、土中埋設や屋内でケーブル保護として使用される。
【ピット】

ピットとは電気配線が通る床溝や床下スペースのこと。配線を隠すことができるので邪魔にならずメンテナンスもしやすい。

【トラフ】

電線を収容するための樋状の収容材。一般的には屋外にてコンクリート2次製品で作られる。

【バスダクト】

ダクトと言っても配線を通すものではなく、銅やアルミを導体とし導体外側を絶縁物で覆った、鉄骨のH鋼に似た幹線用の部材。

【ハンドホール】

地中埋設工事で、ケーブルの挿入や撤去を行うための中継用として設置される地中箱。

【EPS】

建物内における電気用配管ペースのこと。

よくある用語(コンセント・スイッチ編)

■主な表記と意味
図記号 名称 意味
抜け止めコンセント 抜け止めコンセント 差し込み回すことでロックを掛けられるコンセント。「LK」で表記される。「EX」は防爆形。「WP」は防雨形。
4路スイッチ 4路スイッチ 4路結線によって3ヶ所以上の場所で入り切りが可能なスイッチ。
パイロットランプ パイロットランプ 確認表示灯とも。常時点灯、異時点滅、同時点滅など3種類がある。
【XYZ】

接地3Pコンセントなどに付いているX・Y・Zの印のこと。3芯ケーブルを繋ぐ時には一般にX=赤(緑)、Y=白、Z=黒を接続する。アースのマークがある部分にはアース線を繋ぐ。

【極性】

電気器具には極性が有る・無しの2種類があり、極性があるものについては対応した配線を接続しなければならない。一般にL側(ライブ=非接地極側=黒)とN側(ニュートラル=接地極側=白)があり、それぞれの色の配線を対応させる。N極が「W」で書かれているものもあり、配線が白線・黒線の場合、「NやWには白色」と覚えておく。

よくある用語(結線・接地編)

■主な表記と意味
図記号 名称 意味
ジョイントボックス VVF用の接続や分岐接続のためのボックス。接続部分を露出させないのが目的。
接地極(接地) 大地と電気的に接続するために地中に埋設する電極のこと。感電防止に重要。
【パラ接続】

パラとはパラレル(並列)を意味し、配線では黒は黒、白は白同士を結線することを指す。

【輪作り】

露出形コンセントやスイッチの結線をする際に、配線の芯を輪っか状(のの字ともいう)に加工すること。電気工事士技能の基本。

【圧着】

圧着とは、電線と端子に物理的な力を加え機械的に接合することを指す。強固に固定できるので、振動や熱に弱いハンダに代わって使われることも多い。

【S型スリーブ】

引っ張りがかからない場所での軟銅線同士の直線接続に用いる部品。他にもE形、B形、P形などがある。

よくある用語(分電盤編)

■主な表記と意味
図記号 名称 意味
分電盤 分電盤 1次側の電源を受け各部屋の電源の入り切り操作が行える盤。LP盤とも呼ばれる。
電力量計 電力量計 「Wh」で表され電力量を測定するもの。この数値に基づいて電気料金が決定される。
変流器 変流器 変流器(CT)は大きな電流を扱い易い大きさに変換するもの。電圧を変換するものは計器用変圧器(VT)と呼ばれる。
【遮断機】

電力系統に過電流などの異常が発生したときに、自動的に回路を遮断、故障系統を切り離すことを可能にする機器。VCB遮断器(真空遮断器)など。

【開閉器】

電流が流れている電路を開閉できる機器。点検作業時など感電しないよう部分ごとに一時的に電気を切ることができる。LBS(限流ヒューズ付き高圧負荷開閉器)など。

【電気容量】

使用できる電気の容量のこと。各家庭の契約により、30A、40A、50Aといった具合に使用可能な電気容量に違いがある。

【リレー】

制御回路から信号を受けて、メインの回路をオン・オフにする電磁スイッチのこと。

図面や用語からわかること

ちょっとした増設、小規模な工事ならば、わざわざ図面など描かなくても・・・と思う方もしるかもしれませんが、計画が甘いと大きな事故を引き起こすことにもなります。ここからは、実際に全国で起きた電気工事に関する災害事例をご紹介します。

電気事故事例

Case-1
エアコン
【事故事例】

エアコン室内機から出火し、周辺を焼損した。

【原因】

エアコン電源用のコンセントが遠く、据え付け業者が電源コードの延長改造を行ったのが原因。接続部分の処理不良のため出火してしまった。コンセント位置の計画ミス及び業者の技量不足。

Case-2
ダウンライト
【事故事例】

ダウンライトの入力部分で出火し、天井裏の断熱材を焼損した。

【原因】

照明器具の天井埋め込み部分が断熱材で覆われていたため、高熱を帯びて断熱材を燃やしてしまった。電気業者の施工ミス。

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このように電気の事故は、火災や感電など人命をも奪いかねない大きなトラブルとなりかねません。ですから、どんな規模の工事でも、設計者は図面を作成してあらゆる危険予知を行うこと、また施工者は設計図に隠れた意図を取りこぼすことがないよう施工し、リスクアセスメントを行うことが大切です。 図面の中には様々な情報が溢れています。
【まとめ】

図面の書き方まで覚える必要はありませんが、図面を見た時、用語を聞いた時に、造営材(柱や壁など)以外の電気設備の種類や配置などを想像することができれば、見積りや施工において様々な角度からチェックできます。安全な電気工事のためには電気業者に任せるのが重要ですが、私たちも投げっ放しではなく、不安なことはどんどん確認するようにしましょう。